自分か、楽器か


昨日無事にリサイタルを終えました。
今回はピアノが古くて特徴があったので、いろいろな意味で楽しんで演奏してきました。




ドイツ製のピアノで、1世紀は当に越しています。


日本の演奏会との大きな違いは、楽器と会場にあると思います。
日本ではほぼYAMAHA、KAWAI、STEINWAY、BECHSTEIN、FAZIOLI、たまーにBÖSENDORFERですよね。しかもばっちり調整され保護されている楽器。



奏者は大きく分けてふた通りに分かれるかと思います。
自分の表現したいことを通すタイプと楽器と対話するタイプ。

私はどちらかと言うと楽器と対話する方だと思います。



このRÖNISCH、普通にモダンピアノの如く演奏したら、完全に悲鳴あげます。
でも音色はどちらかというと華やかなロマン派の響きを持っているんです。
その分、内向的な表現はとてつもなく難しい。
華やかでありながらも、音の減衰は早く、でも弦が唸る。


こういうピアノで自分はこうやるんだ!と押し通そうとすると破茶滅茶になります。
なので、昨日はその場その場での楽器から出てくるリアクションを活かして演奏してきました。


意外とこういうのは容易ではないのですが、ただその分ここで、この楽器でしか味わうことのできない音楽が生まれるんです。



あと会場。
今回は教会でしたので、響きがなんとも心地よいんですよ。音響学から計算されたホール的な響きではなく、その生活の中の常にある響きとでもいうのか、そこでしか味わえない空気が生み出す響きと言えば良いかな?



その楽器と会場、そして奏者。この3つが重なったときの味わいはヨーロッパならではの演奏会を味わえます。


今回はオールブラームスで、アンコール一曲目まではブラームスの1ページからなる小品で揃えたのですが、その後にバッハを演奏しました。なぜなら、この楽器と会場だからこそが作り出す響きがバッハを際立たせたからです。
その場で来年春にバッハリサイタルをすることが決まりました。


来年日本でもバッハのリサイタルを予定していますが、ここで聴くバッハとは程遠い別物になるでしょう。
どちらが良いとか悪いとかではないです。
でもここの響きのバッハは、特別になりそうです。


せっかくならば、この教会で、このピアノで、バッハを録音したいな〜、と思いました。





昨日のリサイタルも幸せな時間でした。
聞きに来てくださった方々、どうもありがとうございました♪






ピアノ弾きの覚書

ピアニスト 純子マッサーリアの覚書き、ひとりごと、演奏会情報など、気ままにつづります。

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