ベニスに死す-オペラ
これはイタリア映画監督のルキーノ・ヴィスコンティの映画のことではありません。
今日お話しするのは、
ベンジャミン・ブリテン作曲の
ベニスに死す「Death in Venice 」です。
ブリテンが書いた亡くなる前最後の作品がこちら、Op.88。
1973年作(1976年ブリテン没)。
このオペラはあまり上演されないですね。
主役のアッシェンバッハ(テノール)以外はあまり歌いません。
そしてそのアッシェンバッハが我を失う相手は
このオペラ上ではバレリーノが演じ、踊るのみ。
このバレリーノはポーランド人の思春期の少年という設定。
なので、こう考えるだけでも日本での上演は難しいでしょう。
海外からの凱旋公演ならわかる気もしますが、
こんなにマイナーなオペラで日本公演に来るとはちょっと考えられない。
でもね、このオペラ、
すごいんです。
なんか、ホラー映画でもみるかのような
目を惹きつけて離さないその世界は
ブリテンの音楽家としての才能と視点、
今でこそ同性愛は“普通”にとらわれるようになったけれど
この作品が生まれた時代はまだまだタブーの世界。
にしても、ブリテンの音で表す能力、
バレエ団の使い方、
そして英語が主で進むこのオペラ、
なんかすごい世界を生み出したな、、、と。
おそらく日本では見る機会が難しいと思うので
写真をいくつか載せておきます。
この写真だけでもなんとも異様な世界なのが伝わるかと思います。
ちなみに一番最初↑に載せてある悍ましい写真は
主人公のアッシェンバッハがコレラにかかり、ベットの上でもがき苦しんでいるシーンです。
主人公のアッシェンバッハ、著名な作家という役
↑アッシェンバッハがアポロの声を聞き、アポロとTadzio(アポロ銅像前のダンサー)を重ね合わせているシーン
アッシェンバッハがパンデミックのコレラにかかり苦しみながらも
このポーランド人ファミリーにヴェネツィアが今やパンデミックであることを言えずに苦しむシーン
↑アッシェンバッハがベットで休んでいる時に見る
神からの啓示を幻想の中で見ているシーン
↑息絶える前のアッシェンバッハ
Tadzioがヴェネツィアを後にする=ヴェネツィアに死すアッシェンバッハをあとに去っていく
言ってみれば、アシェンバッハは一言たりともTadzioに声をかけることができないのです。
少年への愛で自分を破壊するほど膨らませ
まともな判断さえ失っていく。
とてもレアリティある題材だな、と思いました。
この公演はイタリア🇮🇹ヴェネツィア・フェニーチェ劇場での公演です。
オペラって、どうしてもイタリア物、フランス物、ドイツ物が90%を占めているけれど、
それ以外のこういうオペラももっともっと取り上げられるといいのにな、
と思いました。
芸術の幅が広がると思います。
でもなんとなくだけど、、、
残念ながら日本では難しい気がします。
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