アルゲリッチ2月11日Torinoリンゴットコンサートで学んだこと
こんにちは。
音楽家の純子マッサーリア
Junko Massagliaです。
インスタグラムに投稿した写真でご存じの方もいると思います。
2月11日に我が家から徒歩2分のTorino Lingotto Auditoriumで
シャルル・デュトワ率いるモンテカルロシンフォニーのコンサート。
行ってきましたよ。最後のチケットを奇跡的にゲットして!
今年はラヴェル年なので全てラヴェルプログラムでした。
そしてラヴェルのピアノ協奏曲ソリストはマルタ・アルゲリッチ。
元ご夫婦のふたりが描き出すラヴェルに注目が注がれました。
そして割れるような拍手が続きながらも、彼女(マルタ)の様子がちょっとアレ?っと思う様子。
ステージと舞台袖をなん度も何度も行き来し、聴衆に挨拶するも、
何やらぶつぶつ呟きながらデュトワと、コンミスと、、、と何か言い続けている。
こういう時、自分も少なくとも舞台に立つ身なのでなんとなく伝わったのは
『アンコールを弾く気分ではない』
というメッセージ。
それでも鳴り止まない拍手、ついにマイクを彼女自身が持ち、話し始めた。
『・・・・昨日、私の尊敬するピアニストであるマリア・ティーポ女史が亡くなりました。私が初めて彼女の演奏を聴いたのはブエノスアイレスにいた頃で、彼女の演奏するプロコフィエフ3番のピアノ協奏曲でした。その後私がプロコフィエフのコンチェルトを弾くようになったのも、彼女からのインスピレーションがあったからでした。私にとって彼女は音楽家としての指標でありました。なので、今日ここで彼女に心から敬意を払い、演奏します、、、シューマンの”子供の情景”を捧げます』
そして演奏された”見知らぬ国”。
今まで様々なこの曲の演奏を聴きましたが、これほど天に昇るような自由な空気のような軽やかさと、思慮深い相反した素養を同時に描き出した演奏は聞いたことがなかったです。
最終的にその随分後にもう一曲バッハのイギリス組曲からガヴォットを演奏してくれましたが、
アンコールってその奏者の本質が見えるなあ、、、と思いました。
プログラムの中の曲は華やかさや技術、音楽の高揚など様々な意味でプログラムとして構築されていますが、アンコールはその人の芸術たる元の部分が光る。だからアンコールは実はとっても大事。
このシューマン、
心の奥底にしっかりと刻み込みました。
そんな私もこの曲は大切な思い出のある曲なので、永遠に学べるな、と思いました。
ドイツリートをやっていた頃はシューマン狂でしたが、それ以降はピアノ協奏曲くらいかな、弾き続けているのは。でも、やはりこの”子供の情景”は限りなく魅力的だなと改めて思いました。
何十年経った今、自分もまた異なる情景を生み出してみたい、と思いました。
真似ではなくてね。
もう直ぐイタリアに来て30年。
トリノという大都市に住むようになってからはほぼ皆無と言っていいほど演奏会に行かなくなった私。
せっかくヨーロッパにいるのだもの、これからは機会を見つけてホールに足を運んでみようと思った今日この頃です。
ありがとう、マルタ。
↑ 2月11日にコンサートで使用したスタインウェイを今日弾かせてもらってきました。
このピアノはアルゲリッチはもちろんのこと、ソコロフやヴォロドスもコンサートで使用しているピアノだそうです。
素晴らしい声を持っているピアノでした。スタインウェイなのに暖かなヴォイスから深みのある色まで持ち合わせ、どんなレパートリーも即時に応えてくれました。
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